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クセ「機能性発声障害」いろいろ

声に関する症状

「機能性発声障害」まとめ

悪い歌い“クセ”によるもの

機能性きのうせい発声障害」と聞くと『なんだか重篤な感じに見える…』と思いますが、これは単なる“クセ”です。病的におかしいということは無く、正しいボイストレーニングや、意識の置き方を工夫する「情報処理」で改善できるものです。

むしろ、筆者の経験上は後者の「情報処理」のほうがより重要な原因となっていて、より効果的な解決策となる場合が多いです。

「変声へんせい障害(声変わり)」

身体は大人になったのに、発声の感覚が追い付かずに変声期前の高い声のままで発声しようとしたり、大きくなった地声の筋肉の扱いに困ってバランスが崩れる状態です。

治療/トレーニングは「低い声の出し方を覚える・新しくなった身体で各筋肉や発声のバランスを取りなおす」という作業になります。

まず第1段階として、骨格=この場合は主に「喉頭こうとう/のどぼとけ」が大きく成長した、つまりギターでいえば弦が太くなった=本来出せる地声の音域が低くなった、のにも関わらず高い声を出そうとするので、声帯が開き気味の裏声になり「かすれ声/気息性きそくせい嗄声させい」になります。これに対しては、まず話し声の改善のために低い地声の感覚を覚えてもらうわけですが、専門の医院では「喉頭/のどぼとけ」を指で下げながら発声する」などの音声治療を行うようです。僕も「喉仏を指で押さえれば低く太くなりますよ、でも自力でできないと意味がないですよ」とは言ってましたが、これを治療としてやっているのは少し驚きました。その他にレッスンでやってもらっている内容は「子音・母音の特性を使って慣らしていく」等です。「オ」の母音や「d」の子音は、発音の構造上低く太くしやすい音になります。

第2段階としては、その地声が「ガラガラ声/粗造性嗄声そぞうせいさせい」になりやすいのでそれを改善します。これに関しては、医院の治療までは詳しく分かりませんが、ボイトレの観点で言えば「ノイズを除去した発声にする」作業をします。逆にノイズを入れた発声をあえて歌唱に取り入れる場合もありますので、「ノイズのON/OFF」をできるようにすればいいんですが、ノイズといっても各筋肉のアンバランスさが原因になったり、呼気が原因だったり、それによってノイズの音も変わりますのでここでは詳細は割愛します。もちろん声変わり時期によく出るノイズはありますが、それに加えて余分にノイズを作っている可能性もあります。

第3段階としては、裏声の不完全さを改善します。これに関しては、変声期前に「ヘッドボイス/閉鎖強めで響くオオカミ声」が上手に出来ていれば、そんなに苦労しないんじゃないかなと思います。結局は「新しい身体の状態で、口蓋筋こうがいきんで緊張状態を作れるか」ということになります。

「筋緊張性きんきんちょうせい発声障害」

歌をやる人が一般的に陥るのがこの筋緊張性発声障害です。もう一度確認しましょう。「発声障害」と言いますが、これを含む「機能性発声障害」は病気ではなく声の出し方の問題です。発声は色々なバランスで成り立っていて、色々な筋肉群をバランス良く使う必要があります。悪いを症状をごく簡単にまとめると、過緊張性かきんちょうせい:力が入りすぎ」「低緊張性ていきんちょうせい:力が抜けすぎ」のどちらかということになります。細かく見ていきましょう。

まず問題とされるのは「声帯の閉じ具合=声門閉鎖せいもんへいさ」で、閉じる力が入りすぎると「ヴッ…!」と詰まった状態の「喉詰め声のどづめごえ」に、閉じる力が弱すぎる=開く力が入りすぎると息が漏れる「気息性嗄声きそくせいさせい」の状態になります。それから、声の深さ/音色を調節する時や高音を出す時に「喉頭こうとう/のどぼとけ」周辺の筋肉群の過緊張が問題になります。よく言われるのは上がった状態で過緊張する状態で「ハイラリンクス」と言ったりします。

発声に使う筋肉のうち中心部でバランスを保つ必要があるのは、声帯とその周辺の「内喉頭筋ないこうとうきん」、声帯を包んでいる「喉頭こうとう/のどぼとけ」の外側にある「外喉頭筋がいこうとうきん」、そして「軟口蓋なんこうがい/のどちんこ」を動かすための「口蓋筋こうがいきん」です。その他、腹筋・背筋もパワーの土台として必要になります。

ボイトレ界では「口蓋筋」の仕組みと役割の説明がされることがあまり無いんですが、僕はここに発声の秘訣があることに確信を得てレッスンしている結果、多くの生徒さんが通っている状況があります。色々な発声の問題の多くは、この口蓋筋の状況や扱い方で説明がつくし、そこを中心とした解決策によって実際に良い効果を確認できています。

「心因性しんいんせい発声障害」

心因性発声障害は、その名の通り「心が原因」です。医学的には精神疾患に分類されます。ストレスを感じている精神状態や、特定の場面などで上手く発声ができない状態です。これに関しては一般的に「自信の無い状態」や「萎縮した状態」の中で発声することになるため、力が入らない「弱々しい/無力むりょくせい性嗄声」が見られます。大まかな改善策は「まずは精神面での回復をし、ポジティブ・エネルギッシュに歌えるようになる」ことになります。これを「歌や音楽をしている状況下」でもう少し詳しく考えてみましょう。

1、発声のバランスが崩れて、歌えていたところが上手く処理できなくなったケース
その箇所に差し掛かると、その失敗経験から「また同じように失敗するかもしれない」という意識が働き、各器官が必要な動作をしなくなったり、その失敗した時の発声動作を繰り返したりします。対処法は、正しい発声によって上手く処理できた経験を重ね「何回やっても成功する状態」を作るしかありません。これにはまず、発声理論に基づいた正しい感覚の発声動作が必要になりますので、「どこが悪くて崩れていて、改善するには何をすればいいか」が自分で分からなければ分かる人に聞きましょう。発声は色々な筋肉や感覚が芋づる式に繋がってバランスを保つものですので、どこかがほつれると全体がほつれてぐじゃぐじゃになりやすいものです。

2、上手く歌えていると思っていたが、自分自身や歌に対する自信が無くなったケース
これに関しては「自信を取り戻す」しかありません。自分自身や歌の存在意義を見つける努力をしましょう。その時、他人に評価してもらって自信を取り戻すか、自分自身の中で考えや価値観を改めて自信を取り戻すか、それによって必要な行動も変わるでしょう。

3、もともと上手く歌えていないと思っていて、自信が無くて歌えないケース
この場合は一つひとつできることを増やしていくことで、スキルと共に自信も付けることができます。歌や表現の個性は様々ですが、基本的には声量たっぷりに歌えるようにトレーニングしておくと、ポジティブなエネルギーも生まれやすくなると思います。

一般的な症状に対する改善策を示しておきます。「萎縮した状態」や「様子見をしながら歌う状態」では、まず、顎や唇の動きが停滞して動作が小さくなります。そのネガティブな要素を振り払うように、顎は落として開き、耳横のくぼみができる状態まで「ぐわっと」動かしながら歌うように心がけます。それと一緒に、唇は前方方向に伸ばそうとする動作をベースにして、各母音や子音を発声・発音していきます。表情筋も引き攣るひきつることが多くなりますので、こめかみを上げるようにして表情筋も伸ばしながら使うように心がけます。こめかみを上げれば、その内側にある口蓋筋こうがいきんの働きが刺激され、喉声にさせない正しい発声に繋がっていきます。音色・響きの調整は二の次です。まずは心身共にポジティブに歌えるようにしましょう。


ここまでが、ボイストレーニングで改善を図ることができる「機能性発声障害」です。基本的には発声を変えていくことで根本的な問題を解決します。が、最後にもう一つ紹介できる改善策は「発声じゃなくて音楽に目と耳を傾ける」というものです。「あまりにも『発声』ばかりに意識を置くので、音楽の流れも停滞して発声の筋肉も停滞する」ことは良く見られます。音楽の表情の流れに意識を置いて「音楽の波に乗る」ことで、自然に必要な身体の動きに戻りる可能性は充分にあります。具体的には「クレッシェンドをかけようとすることで、顎の開きも動いていき詰まりも取れる」といった具合です。実際のレッスンでも、発声のドツボにハマったら良くやってもらう方法です。


以上、色々な「機能性発声障害」についてまとめました。

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